2006年 02月 01日
「オリバー・ツイスト」 |
映画「オリバー・ツイスト」(ロマン・ポランスキー監督)を見る。映画の日だったが、平日の昼間の回で観客は25人ほど。やっぱりちょっと寂しいかな。
わたしがディケンズの原作を読んだのは、はるか昔のことである。おおまかなストーリーとどのような小説だったかという印象しか残っていない。あえて読み返すほどでもない、と考えていた。
で、映画であるが、わたしのディケンズ作品に対するイメージに非常に近いものだった。
原作を読んだときの印象は「なんだかこれは紙芝居みたいな話だなあ」というもので、よく言えば波乱万丈、悪く言えばそれこそ紙芝居なのであった。そういう話を映画化する場合に、過剰にセンチメントが入るケースがある。ポランスキーのこの映画はそういうセンチメントがほとんど感じられない、あっさりした作品である。
わたしの思うには、これこそがディケンズの小説の特徴ではないか。
いわゆる国民作家、大衆作家であったディケンズの作品は分冊販売という形式で読まれたという。大勢の読者をひきつけながら、続き物として書かれたものがほとんどである。したがって、筋書きがドラマチック(かつ不自然)なのはあたりまえだし、細かな心理描写や自然描写もほとんどない。そういう意味でディケンズは同時代の文学界からは孤立した存在だったという。
そのディケンズの作品の特徴をこの映画は忠実に映像化しているように思う。
CGを使わずに、プラハの郊外に作った広大なロンドン市街のセットは見事だし、俳優たちの演技もしっかりしている。映像の隅々にまで行き渡った心配りはさすがにポランスキーの作品である。
ただ、原作を読まずにこの映画だけを見て、最近のエグいハリウッド映画と比べてインパクトに乏しいと感じる若者はきっと不満に思うだろう。事実アメリカではまったく観客が入らなかったという。たぶん日本でもそう受けそうな映画とは思えない。関心がある人は早く見に行かないと上映が打ち切られる可能性がある。
ただ、わたしはけっして悪い映画だとは思わない。
by himitosh
| 2006-02-01 17:13
| 映画