植木等の死 |
ま、それはともかく、ひと月ほど前にDVDで映画「ニッポン無責任時代」(古沢憲吾監督)を見たので、こんなにすぐ植木等が死ぬとは思ってもいなかった。映画自体は、はっきり言っていま現在観るとかなり苦しい。それほど笑えない。朝日新聞に小林信彦が書いた追悼文のなかで、植木のおもしろさはステージ→テレビ→映画の順番だとあった。生のステージは観たことがないが、たしかにテレビとくらべて映画のほうがつまらなかったように思う。
わたしも日本のベビーブーマーの一員だから、中学から高校時代の日曜日の夕方は「てなもんや三度笠」から「シャボン玉ホリデー」という流れで毎週テレビを観ていた。あの頃の植木等やクレージーキャッツのギャグの水準の高さはぬきんでていたように記憶している。それにくらべると東宝で作っていたクレージーキャッツの映画もかなり観たけれど、どれも今ひとつだった。
しかし、「ニッポン無責任時代」を観ていて感じたのは、植木等が歌ったり演じたりしていた価値観がそれまでの社会的な約束事を気持よく突き抜けていたことだった。そのおかげでけっして笑える映画ではないのに、観ている間は気分がいいのだ。
まあ、とにかくひとつの時代を作った芸人だったことは間違いない。
<追記>
植木等の肺気腫(COPDと書いたほうがいいかもしれない)による死について日本禁煙学会の見解が示されている。それを読むと、やはり植木等は20歳から50年間喫煙し、COPDを発症してからタバコをやめたという話だ。
痛ましいことだ。COPDはじわじわと呼吸機能が低下していくために、とても苦しい死に方になる。
この見解でも主張されているが、植木等の死に関するマスメディアの報道には大いに問題がある。きちんとタバコの害を伝えることこそがメディアの義務ではなかろうか。