禁煙促進効果抜群の喫煙ルームとJR各社のタバコ対策 |
JR東日本は全面禁煙を導入した理由を「密閉された車内空間で受動喫煙を防ぐには、完全禁煙しか方法がないため」と説明している。車内に喫煙席がある限り、エアカーテンや気流制御装置を使っても、客や乗務員が喫煙車に出入りするたびに煙や臭いが漏れ出すのは抑えられない。苦情が絶えなかったという事情がある。
完全禁煙化にあわせ、同社は総額5億円をかけて、主な新幹線駅に排気ダクトを備えた喫煙ルームを設けた。「車内は禁煙、たばこは喫煙ルームという<分煙>を理解してもらいたい」ということである。
左の写真は高崎駅の新幹線ホームにある喫煙ルーム、その下が上野駅の喫煙ルームの写真である。時間帯もあるだろうが、立錐の余地のないほど喫煙者たちで混み合っている。ほとんどがサラリーマン風のオヤジたちである。ガラス張りなので、なかが丸見えである。さらし者にされている、といってもかまわないだろう。外から見られるのがイヤで、ほとんどの人が内側を向いているのがわかる。壁に向かって立ち小便をしている姿と似ていると感じるのはわたしだけではあるまい。ま、これだけいれば、連れションだが。この喫煙ルーム内の空気はさぞかし悪かろうと想像する。鼻もひん曲がるほどのタバコの臭いと煙に満たされているはずだ。
なんだかずいぶんみじめそうに思えるが、こういうところで吸っていて、タバコをうまく感じるのだろうか。いや、そうではあるまい。おそらく「あ~、これから数時間の禁煙に耐えるために俺はニコチンの補給をしている」という感じがつきまとうのではないか。これはわたしの想像だけではない。東北新幹線東京駅の喫煙ルームに関してこんな感想を書いている喫煙者のブログがある。やはり見世物にされている、馬鹿にされているという感じを持つようである。しかし、このような仕掛けがあるからこそ、喫煙という悪習の本質が喫煙者自身にもよくわかるのではないか。その意味ではこのガラス張り喫煙ルームを目立つところに設置するのは、禁煙促進の効果があるように思う。
さて、JR東海とJR西日本は東海道・山陽新幹線で、16両編成のうち4両の喫煙車をいまだに残している。のぞみの場合、喫煙席のほうが予約率が高いといい、JR東海、西日本は「依然として喫煙席のニーズは高く、今のところ見直す考えはない」と語っているそうだ。
わたしも名古屋方面に出るときなどたまにJR東海の特急しなのに乗ることがある。もちろん禁煙車を選ぶのだが、喫煙車のすぐ隣の車両は絶対に避けるようにしている。理由はやはりタバコ臭いからである。ドアの開閉にともない必ずタバコの煙が漂ってくる。また、タバコを吸う客でも喫煙車にこもる強烈な煙と臭いには耐えられないらしくて、禁煙車に席を取って喫煙車にタバコを吸いに行く者もいる。こういう人が喫煙車の隣の禁煙車にはいることがある。もちろん彼の身体全体にタバコの臭いが染みついていて、近寄りたくないほどクサイのである。
記事のなかでJR東海幹部は「禁煙は世の流れといっても、成人の喫煙率はまだ三割もある。全面禁煙が定着した飛行機と対抗するのに、タバコを吸えることは一つのサービスになる」と言っている。飲食店などと同じで「タバコを吸えるのがサービス」という考え方ははっきり言って間違っているし、時代錯誤である。
左の飛行機とJRのシェアを示したグラフを見ても、要するにどちらを選ぶかは所要時間が決定的な要因なのであって、タバコを吸える吸えないではない。むしろタバコがイヤという客を遠ざける結果になっている面を見落としているのではないか。全面禁煙にしたほうが客を呼べる可能性があるのではないか。今後、山形とか青森への旅客数でJRのシェアが拡大すれば、それは全面禁煙化による集客効果があったことになる。クサイJRには乗りたくない人はかなりいるとわたしは見ている。
現にわたしは名古屋に出るときもJRではなく高速バスに乗ることが多くなってきた。喫煙客と一緒に沈没する運命をJR東海とJR西日本はたどるのだろうか。