COPD患者は食べられなくなる |
北海道帯広市の男性Aさん(69)は約5年前、食欲がなくなり医療機関を受診すると、COPD(慢性閉塞(へいそく)性肺疾患)と診断された。身長は162センチで体重はこの10年間、42キロのやせ過ぎ。昨年10月から2か月間、高カロリーの栄養剤を飲んだところ、体重は2キロ増え、食欲も出てきた。「肺が弾力を失って大きくなるため、胃が圧迫され、十分に食べるのが難しくなる。加えて、肺を動かす横隔膜などの筋肉が余計に動かざるを得なくなるため、安静時のエネルギー消費量が、健康時の約1・5倍に増える」というこの説明は何だかすごくインパクトが強い。たしかに症状が深刻化したCOPD患者は痩せている人が多い。
COPDは、主に喫煙が原因で中高年になって症状が出てくる「肺気腫」と「慢性気管支炎」の総称。患者は推計530万人。栄養不足で体力が低下すると、高齢者では致命的にもなりかねない肺炎にかかりやすくなる。患者にとって栄養の確保は大変重要だ。
しかし、症状が進むと、肺が弾力を失って大きくなるため、胃が圧迫され、十分に食べるのが難しくなる。加えて、肺を動かす横隔膜などの筋肉が余計に動かざるを得なくなるため、安静時のエネルギー消費量が、健康時の約1・5倍に増える。
食べること自体にも体力が必要で、栄養不足になるとますます体力や筋肉が落ち、呼吸も苦しくなり、さらに食べられなくなるという悪循環に陥る。奈良県立医大第2内科教授の木村弘さんは「患者全体の約3割が『やせ』。症状が進んだ患者では6割に及ぶ」と話す。
大豆製品や肉、魚といったたんぱく質を多く含む食品を積極的に取りたい。一度に十分な量を食べられなければ、食事を1日4~6回程度に分けるのも一案。カロリーを上げるため、バターでいためたり、揚げ物にしたりする工夫もある。また、おやつにチョコレートやアイスクリームを食べるのも良い。それでも食事量を増やすのが難しい場合、「経腸栄養剤」を利用することもできる。
手術後など口から食べられなくなった人に、チューブで流し込む時にも使われる人工の流動食だが、口から飲めるように味も工夫されている。消化吸収が良く、栄養価が高く、栄養バランスも調整されている。人工濃厚流動食とも言われ、とろみがある。商品は100種類以上。栄養バランスのほか、バニラやコーヒーなど味の違いもあり、薬局などで購入できる。
Aさんは、1日3回の食事に加え、1本125ミリ・リットルで200キロ・カロリーの飲料タイプの栄養剤を毎日2本、朝と夜の食後に飲んだ。体重は2か月間で44・5キロになった。Aさんは「甘みがあって毎日飲めた。飲み始めてから以前よりも食欲が増した気がする」と話す。
ただ、経腸栄養剤は副作用の心配がゼロではない。厚生労働省は29日、この摂取により過去3年間に意識障害や呼吸困難などアナフィラキシー反応を起こした可能性がある例が8人あり、70歳代の女性1人が死亡したと発表し、注意を呼びかけた。
日本医大呼吸ケアクリニック(東京・市ヶ谷)所長で同大呼吸器内科教授の木田厚瑞(こうずい)さんは、「ごくまれな例なので神経質になることはないが、『薬』だという認識を持ち、使用する際は必ず医師の指示に従って欲しい。過去にぜんそくなどのアレルギー反応を起こしたことがある場合は特に注意が必要」と話している。(読売新聞1月30日)
このチューブ食というやつだが、わたしの死んだ父親が最後は嚥下障害になって食事がとれなくなったときにこれをやった。あのときは鼻からチューブを入れて液状の食事を流し込んでいた。看護婦さんが「食事ですよ~」といいながら透明な入れ物に入った液体を持ってくるを見てつくづく可哀想だと思った。
COPDの場合には口から飲むようだが、それでも食事とは言えないように思う。そうした状態に陥る前に、早くタバコと縁を切ることが必要ではないか。