
2月に出た『食のイタリア文化史』(岩波書店)に続いて、わたしの翻訳した別の本が出た。ニコラス・ファレル『ムッソリーニ』(白水社)がそれだ。今週の終わりには書店に並ぶと思う。
上下二巻で、本文だけでも850頁という大部な本である。読んでもらえればわかると思うが、ムッソリーニの政治的経歴は実に長くて、20年以上政権を維持しただけでなく、激しい人生の浮沈を経験した人物なので、その生涯を語るためにはこれだけの長さはどうしても必要だったと思う。
著者のファレルはイギリスのジャーナリストで、この本は歴史研究者では書けないような部分が数多くあり、それがまたおもしろい。ムッソリーニ、ファシズムなどに関しては歴史修正主義の影響が強い本だが、すごく読ませる本である。
あとがきにも書いたが、翻訳の話がわたしのところに来たのが一昨年の秋のことで、翻訳作業に取りかかったのが一昨年の暮れだった。で、本文だけで400字の原稿用紙2千枚になる翻訳作業を7カ月で終わらせてしまった。あとは何人かの人に読んでもらって修正をし、きっかり1年で白水社に原稿を引き渡した。
なぜこんなに早くできたかというと、テクノロジーの進歩が大きかったのだ。
いまはドキュメント・スキャナがあって、紙の本を簡単に電子化してくれる。これを使って原書を電子化し、コンピュータのディスプレイ上で作業を進めた。こうすると横長のディスプレイの左に原書、右に訳稿を表示し、辞書もPC上で使うことができるので、まったく視線を移動させずに仕事を進められる。
また、データをオンライン・ストレージに置いて作業をしたので、ネットにつながったコンピュータさえあれば、どこにいても、何も持たなくても仕事ができる。おかげで1日4千字、原稿用紙10枚という自分に課したノルマはさほど苦でもなくこなすことができた。(もとの英語がジャーナリストの文体だけに易しかったこともある。)
いずれにせよ、非常におもしろい本なので、ぜひ本屋で手にとって読んでみてほしい。よろしければ買っていただきたい。ダメなら図書館に購入を申し込んでいただきたい。