2010年 02月 26日
「カラヴァッジョ」 |
2時間以上ある長い映画だった。わたしはおもしろく見たが、映画としては「?」がつくように感じた。
カラヴァッジョが無頼の人生を送った画家であることはよく知られているが、その伝記映画かというとそうではない。いちおうラストは主人公の死で終わっている。しかし、この映画を見てもカラヴァッジョという画家のデモーニッシュな創作の秘密は明らかにならない。あくまでも断片的な人生の切れ端だけしかない。
イタリア・ルネサンス後期の芸術や社会について予備知識のない人にはずいぶん難しい映画だと思う。登場人物も多くて、女性役の区別がなかなかつかない。そんなに入り組んだ話でもないのに、錯綜した印象を与える。
わたしが楽しく見た理由を書いておこう。それはカラヴァッジョが残した作品を映画の中で再現しているところである。
ゴダールに「パッション」という作品があるが、あれは活人画で名画を再現する作業をする話だった。たとえばレンブラントの「夜警」のような大がかりな作品を再現するのである。この映画での絵画の再現はもっと小規模だが、それがすごくうまくいっている。映画の中で取り上げられているカラヴァッジョの作品のほとんどをわたしは自分の目で見ていることに気づいた。
また、撮影を担当しているヴィットリオ・ストラーロの力量だろうが、画面の美しさは素晴らしい。そのあたりもある意味でカラヴァッジョの絵画と重ねてとらえることができるかもしれない。イタリアの美術や文化に関心のある人ならおもしろく見ることができるだろう。
by himitosh
| 2010-02-26 19:32
| 映画