2005年 10月 09日
ローマ風敬礼 |
今日はわたしが住む村の村民運動会というものがあって、朝のうちはそれに顔を出す。去年も書いたと思うのだが、この運動会は盆踊りと並んで村の最大のイベントで、昔とくらべれば寂しくなったという話だが、それでも千人近い人が参加する。
村を六つの地区に分けての地区対抗という形式なのだが、朝8時半に集まって地区ごとの参加者が列を作る。そして点呼をして数を確認する。もうここから競技が始まっているのである。数が多いほうが点が高い。その効果もあって朝早くから大勢の人が集まってくる。
点呼が終ると入場行進ということになるのだが、ここでちょっと困ることがある。それは村長をはじめとする来賓の前を通過するときに右腕を斜め前方に差し出す格好をしろ、と指示があることである(いつも必ずというわけではないが、指示があることが多い)。これは「ローマ風敬礼Salute alla romana」といって古代ローマ帝国の兵士たちが行っていた敬礼である。
古代ローマで終っていればいいのだが、この敬礼をイタリアのファシストたちが1920年代に復活させた。ムッソリーニに向かってファシストたちがこのローマ風敬礼をやっている写真がいまでも大量に残っている。
そして、ナチス・ドイツがファシストからこれを学んで、積極的に取り入れた。「ハイル・ヒトラー」という怒号とともに、この敬礼をすることが国家社会主義者たちには義務となったのである。
したがって、この右腕を斜め前に差し出す敬礼のやり方は、第二次大戦後は国際的に完全な非礼を意味することとなった。また、ドイツには「反ナチス法」という法律があってナチスを賛美するような言論や行為は処罰の対象となるのだが、集団でこのローマ風敬礼をやるとそれだけで逮捕されるケースがあるという話だ。
ところが、である。日本ではこの敬礼が1960年代ぐらいまで続いていた。オリンピックに参加する日本選手団が行っていたのである。たしか1960年のローマ・オリンピックで猛烈なブーイングを食らったという。それもそのはずである。ファシストの母国であるイタリアでは戦争が終ってまだ15年しか経過しておらず、ファシズムの記憶はほとんどの世代に強く残っていた。そこへ行ってこのローマ風敬礼をあえてやったのだから、問題にならないはずがない。
さすがにJOCもこの不評に懲りたらしく、そのあとのメキシコもしくはモントリオールのオリンピックあたりからは取りやめたはずだ。
ネット上で検索すると、ローマ風敬礼ではなくて「ナチス式敬礼」と日本では呼び習わされているらしい。そして、けっこう最近まであちこちの学校や高校総体などの入場行進の際に行われていたという。さすがに事情がわかってきて、やめるところが大半になってきたという話。そういえば、甲子園の高校野球の開会式での選手宣誓でも右手をさし上げる仕草はしていなかった。さすがに大勢の外国人が見る可能性があるイベントでは差しさわりがあるのだろう。
しかるに、わが村ではこのローマ風敬礼を依然としてやっているのである。まあ、外国人(それもヨーロッパ系の)が村民運動会を見る機会は少なかろう。だからこれまで問題にならなかったのかもしれない。それにしても村民たちが事情を知らずにやっているのはわかるが、もしツアー旅行かなんかでドイツに行って何かの拍子にあの敬礼を集団でやってしまったら、即ブタ箱行きである。少しは歴史を勉強しないといけないのではないか。一度村長に手紙でも書いて、来年からはやめるように言おうかとも考えている。
また「ウルサイ先生」とか言われそうだが。
村を六つの地区に分けての地区対抗という形式なのだが、朝8時半に集まって地区ごとの参加者が列を作る。そして点呼をして数を確認する。もうここから競技が始まっているのである。数が多いほうが点が高い。その効果もあって朝早くから大勢の人が集まってくる。
点呼が終ると入場行進ということになるのだが、ここでちょっと困ることがある。それは村長をはじめとする来賓の前を通過するときに右腕を斜め前方に差し出す格好をしろ、と指示があることである(いつも必ずというわけではないが、指示があることが多い)。これは「ローマ風敬礼Salute alla romana」といって古代ローマ帝国の兵士たちが行っていた敬礼である。
古代ローマで終っていればいいのだが、この敬礼をイタリアのファシストたちが1920年代に復活させた。ムッソリーニに向かってファシストたちがこのローマ風敬礼をやっている写真がいまでも大量に残っている。
そして、ナチス・ドイツがファシストからこれを学んで、積極的に取り入れた。「ハイル・ヒトラー」という怒号とともに、この敬礼をすることが国家社会主義者たちには義務となったのである。
したがって、この右腕を斜め前に差し出す敬礼のやり方は、第二次大戦後は国際的に完全な非礼を意味することとなった。また、ドイツには「反ナチス法」という法律があってナチスを賛美するような言論や行為は処罰の対象となるのだが、集団でこのローマ風敬礼をやるとそれだけで逮捕されるケースがあるという話だ。
ところが、である。日本ではこの敬礼が1960年代ぐらいまで続いていた。オリンピックに参加する日本選手団が行っていたのである。たしか1960年のローマ・オリンピックで猛烈なブーイングを食らったという。それもそのはずである。ファシストの母国であるイタリアでは戦争が終ってまだ15年しか経過しておらず、ファシズムの記憶はほとんどの世代に強く残っていた。そこへ行ってこのローマ風敬礼をあえてやったのだから、問題にならないはずがない。
さすがにJOCもこの不評に懲りたらしく、そのあとのメキシコもしくはモントリオールのオリンピックあたりからは取りやめたはずだ。
ネット上で検索すると、ローマ風敬礼ではなくて「ナチス式敬礼」と日本では呼び習わされているらしい。そして、けっこう最近まであちこちの学校や高校総体などの入場行進の際に行われていたという。さすがに事情がわかってきて、やめるところが大半になってきたという話。そういえば、甲子園の高校野球の開会式での選手宣誓でも右手をさし上げる仕草はしていなかった。さすがに大勢の外国人が見る可能性があるイベントでは差しさわりがあるのだろう。
しかるに、わが村ではこのローマ風敬礼を依然としてやっているのである。まあ、外国人(それもヨーロッパ系の)が村民運動会を見る機会は少なかろう。だからこれまで問題にならなかったのかもしれない。それにしても村民たちが事情を知らずにやっているのはわかるが、もしツアー旅行かなんかでドイツに行って何かの拍子にあの敬礼を集団でやってしまったら、即ブタ箱行きである。少しは歴史を勉強しないといけないのではないか。一度村長に手紙でも書いて、来年からはやめるように言おうかとも考えている。
また「ウルサイ先生」とか言われそうだが。
by himitosh
| 2005-10-09 17:43
| 文化一般