2005年 11月 06日
二本の小津作品 |
DVDで小津安二郎監督の「晩春」(1949)と「麦秋」(1951)を見る。デジタル・リマスター版で、小津をはじめとする50年代の日本映画につきものの不安定な画面がかなり少なくなっていて見やすい。
「晩春」と「麦秋」はどちらも似たような話で、婚期を逸しかけている娘(原節子)をめぐってストーリーが展開する。ともに鎌倉在住の一家の話だが、「晩春」では父(笠智衆)と娘の二人暮しという設定である。父は大学教授で56歳、娘は27歳、母親は死んでいるという設定。世話好きの叔母(杉村春子)が縁談を持ち込む。
「麦秋」のほうは一転して三世代の賑やかな大家族の話。やはり娘の結婚が話の中心となる。こちらはキャストがおもしろい。笠智衆は珍しく若作りで原節子の兄の役をつとめる。宮口精二や高堂国典など黒澤の「七人の侍」に出ていた俳優たちが登場する。
どちらもとても「笑える」映画である。オフビートの笑いとでもいうべきか、とにかくなんでもない言葉をやりとりするなかでストンと落とす部分がある。それはクスクスというよりも(わたしの場合)ワハハハという笑いにつながるのだ。一例をあげよう。
「麦秋」で杉村春子(原節子の戦死した兄の友人の母)が、子連れでやもめになった息子ののち添えに原節子を見込んで、そのことを打ち明け、承諾の返事をもらう。狂喜して「よかった、よかった。ありがとう、ありがとう」を繰り返したのち「紀子さん、パン食べる? アンパン食べる?」と持ち出す。脱力というか、絶妙の間で繰り出すセリフに思わずワハハハ。
結婚の承諾の返事をして家に戻った紀子はそのことを兄夫婦と両親に伝える。「何もそんなところに嫁に行かなくても」という感じの兄夫婦。両親も心から賛成というわけにはいかない。押し黙る一同。そこで母親が一言:「お父さん寒くないですか?」父親「ああ...寝ようか」
これだけ読んでもどこがおもしろいのか、笑えるのかわからないかもしれない。しかし、これも絶妙のタイミングで出されるセリフなので、笑うしかないのである。
どちらも優れた映画だと思うが、わたしには「麦秋」のほうが笑える場面が多かった。小津の映画がこんなに笑える映画だとは思わなかった。
「晩春」と「麦秋」はどちらも似たような話で、婚期を逸しかけている娘(原節子)をめぐってストーリーが展開する。ともに鎌倉在住の一家の話だが、「晩春」では父(笠智衆)と娘の二人暮しという設定である。父は大学教授で56歳、娘は27歳、母親は死んでいるという設定。世話好きの叔母(杉村春子)が縁談を持ち込む。
「麦秋」のほうは一転して三世代の賑やかな大家族の話。やはり娘の結婚が話の中心となる。こちらはキャストがおもしろい。笠智衆は珍しく若作りで原節子の兄の役をつとめる。宮口精二や高堂国典など黒澤の「七人の侍」に出ていた俳優たちが登場する。
どちらもとても「笑える」映画である。オフビートの笑いとでもいうべきか、とにかくなんでもない言葉をやりとりするなかでストンと落とす部分がある。それはクスクスというよりも(わたしの場合)ワハハハという笑いにつながるのだ。一例をあげよう。
「麦秋」で杉村春子(原節子の戦死した兄の友人の母)が、子連れでやもめになった息子ののち添えに原節子を見込んで、そのことを打ち明け、承諾の返事をもらう。狂喜して「よかった、よかった。ありがとう、ありがとう」を繰り返したのち「紀子さん、パン食べる? アンパン食べる?」と持ち出す。脱力というか、絶妙の間で繰り出すセリフに思わずワハハハ。
結婚の承諾の返事をして家に戻った紀子はそのことを兄夫婦と両親に伝える。「何もそんなところに嫁に行かなくても」という感じの兄夫婦。両親も心から賛成というわけにはいかない。押し黙る一同。そこで母親が一言:「お父さん寒くないですか?」父親「ああ...寝ようか」
これだけ読んでもどこがおもしろいのか、笑えるのかわからないかもしれない。しかし、これも絶妙のタイミングで出されるセリフなので、笑うしかないのである。
どちらも優れた映画だと思うが、わたしには「麦秋」のほうが笑える場面が多かった。小津の映画がこんなに笑える映画だとは思わなかった。
by himitosh
| 2005-11-06 21:36
| 映画