2006年 03月 12日
NLPの思い出 |
神奈川県厚木基地からの艦載機の移転をめぐる山口県岩国市での住民投票が行われ、投票率が50%を越えて成立した。おそらく投票の結果は移転の受け入れに対する拒否が多数を占めることだろう。
実はわたしは信州に赴任する前の数年間を厚木基地の近くの大和市で過ごしたことがある。そのときのことを書いておこう。
いろいろな事情があって大和市に引っ越したのだが、家を探したのは土日であった。ふつうの勤め人は土日しか自由になる時間はないのである。これがやっぱり問題で、土日は米軍基地も訓練をしない。だから、実態がまったくわからないまま引っ越してしまった。
で、引っ越して間もないある日の勤め帰りに大和の小田急の駅に着いたときに初めて艦載機の爆音を聞いた。そのときのショックというのは今でも覚えている。ジェット旅客機の騒音はそれまでにも聞いたことがあったが、それとはまるで質が違う音なのである。大地を揺るがすような低い、そしてものすごく大きな音がまわり中を取り囲む。最初に聞いたときには「いったいこれは何の音か」とうろたえてしまった。だが、まわりの人たちは平然としている。
これがいわゆるNLP(Night Landing Practice)の騒音との出会いであった。NLPとは空母の艦載機パイロットが行う、飛行場の滑走路を空母の甲板に見立てて行う夜間離発着訓練のことである。あの小さな甲板に着陸するには非常に微妙な感覚が必要で、空母が港に入っている間は訓練ができない。そして訓練を2週間やらないとパイロットは離発着の技能を大幅に低下させるため、この訓練は欠かすことができないという。しかし、NLPは本当にものすごい騒音を撒き散らすのである。
それは当然である。市街地に近い空港へ下りる旅客機は当然のことながら、騒音対策を立てている。それに引き換え軍用機、とくに艦載機のような戦闘機は戦闘能力を最大限に高めるために、そうした騒音を抑えるような配慮は一切していない。まあ、普通のクルマと(マフラーなどを外した)暴走族のクルマの違いにたとえてもいいだろう。しかも、その飛行機が超低空を飛行するのだから、たまったものではない。
自分の生活が日米安全保障体制に組み込まれているということを骨身にしみて感じとれる経験は普通の日本人にはそれほど多くないだろう。だが、このNLPの騒音はまさしくそうした経験なのである。
わたしが住んでいた家は、幸い滑走路の延長線からはかなり離れていた。それでも、夏の暑い夜に数時間、絶えず猛烈な騒音が襲ってくるのには参ってしまった。とてもではないが、あんなことを住宅地の真ん中にある飛行場でやるという神経を理解できなかった。硫黄島かどこかの、人の住んでいない島に滑走路を作ってやるべき訓練である。
NLPを続ける限り、艦載機の移動を受け入れるのは考え物だと思う。実際に経験してみないと、あの騒音の暴力性は絶対にわからないだろう。目の前が真っ暗になるような、この世の終わりが来たような、そんな音なのである。
実はわたしは信州に赴任する前の数年間を厚木基地の近くの大和市で過ごしたことがある。そのときのことを書いておこう。
いろいろな事情があって大和市に引っ越したのだが、家を探したのは土日であった。ふつうの勤め人は土日しか自由になる時間はないのである。これがやっぱり問題で、土日は米軍基地も訓練をしない。だから、実態がまったくわからないまま引っ越してしまった。
で、引っ越して間もないある日の勤め帰りに大和の小田急の駅に着いたときに初めて艦載機の爆音を聞いた。そのときのショックというのは今でも覚えている。ジェット旅客機の騒音はそれまでにも聞いたことがあったが、それとはまるで質が違う音なのである。大地を揺るがすような低い、そしてものすごく大きな音がまわり中を取り囲む。最初に聞いたときには「いったいこれは何の音か」とうろたえてしまった。だが、まわりの人たちは平然としている。
これがいわゆるNLP(Night Landing Practice)の騒音との出会いであった。NLPとは空母の艦載機パイロットが行う、飛行場の滑走路を空母の甲板に見立てて行う夜間離発着訓練のことである。あの小さな甲板に着陸するには非常に微妙な感覚が必要で、空母が港に入っている間は訓練ができない。そして訓練を2週間やらないとパイロットは離発着の技能を大幅に低下させるため、この訓練は欠かすことができないという。しかし、NLPは本当にものすごい騒音を撒き散らすのである。
それは当然である。市街地に近い空港へ下りる旅客機は当然のことながら、騒音対策を立てている。それに引き換え軍用機、とくに艦載機のような戦闘機は戦闘能力を最大限に高めるために、そうした騒音を抑えるような配慮は一切していない。まあ、普通のクルマと(マフラーなどを外した)暴走族のクルマの違いにたとえてもいいだろう。しかも、その飛行機が超低空を飛行するのだから、たまったものではない。
自分の生活が日米安全保障体制に組み込まれているということを骨身にしみて感じとれる経験は普通の日本人にはそれほど多くないだろう。だが、このNLPの騒音はまさしくそうした経験なのである。
わたしが住んでいた家は、幸い滑走路の延長線からはかなり離れていた。それでも、夏の暑い夜に数時間、絶えず猛烈な騒音が襲ってくるのには参ってしまった。とてもではないが、あんなことを住宅地の真ん中にある飛行場でやるという神経を理解できなかった。硫黄島かどこかの、人の住んでいない島に滑走路を作ってやるべき訓練である。
NLPを続ける限り、艦載機の移動を受け入れるのは考え物だと思う。実際に経験してみないと、あの騒音の暴力性は絶対にわからないだろう。目の前が真っ暗になるような、この世の終わりが来たような、そんな音なのである。
by himitosh
| 2006-03-12 20:17
| 社会