2006年 04月 16日
タバコ自動販売機の成人識別機能 |
どこに行っても存在するタバコの自販機が未成年者の喫煙を容易にさせている元凶であることは誰にでもわかることである。日本にはもともと世界に誇る「未成年者喫煙禁止法」があり、明確に未成年にタバコを売ることが禁じられており、購入者の年齢確認が義務づけられている。法的にはタバコは年齢を確認しての対面販売が基本である。したがって現在のタバコの自販機はほぼ全体が違法状態なのである。
喫煙を始める年齢が低ければ低いほど、ニコチンへの依存度は高まり、それと同時に各種のタバコ病に罹患する危険性も高まる。ニコチンへの依存度が高いということはタバコから離れ難いということであり、JTとしては自販機をさりげなく街のあちこちに設置することで、長くタバコを購入してもらえる顧客を早めに確保できているのである。悪魔の商法と呼んでも差し障りはなかろう。
この自販機に成人識別機能を持たせるというのが最近のJTの方針らしい。それによって未成年者にタバコを売らないという建前を示したいということのようだ。その事情は国際的なタバコ規制条約に日本が加盟し、そのなかで厳しい未成年喫煙防止対策が義務づけられていることから来ている。一種の逃げ道として発案された方策だが、日本政府の自発的な意思ではないのである。
以前にも書いたが、未成年者にタバコを吸わせないことを狙いとするならば、タバコの価格を上げることのほうがはるかに有効かつコストも低いのであるが。自販機の改造とカードの発行などのために800億円の費用がかかる。その費用を子どもたちの喫煙防止教育にまわしたほうがより効果的であろう。
実際にこの成人識別カード・システムが導入されて、未成年者がタバコを手にすることが難しくなるだろうか。たしかに、まったく何の規制もない現在よりもタバコを買いにくくはなるだろう。しかし、どのコンビニでも対面販売でタバコは売られている。中学や高校の制服を着た子どもたちが買うのは若干難しかろうが、私服で買いに来る客にタバコの販売を拒む店もそう多くはあるまい。したがって、この面に関してはそれほど大きな変化はないのではないかと予想する。
さて、大人の喫煙者の場合はどうか。日本たばこ協会というところに生年月日の記された身分を証明する書類のコピーを送れば無料でカードが送付されるという話だが、そういう面倒なことをすべての喫煙者がするだろうか。また、カードを紛失してしまったら再発行をしてもらうのだろうが、前に発行したカードは簡単に失効させることができるのだろうか。そうでなければ、紛失と称して何枚も発行させて、それを未成年者たちに売り払う奴が必ず出てくるだろう。
また、このカードにはプリペイド機能をつけるという話であるが、これには大いに問題がある。たとえ喫煙者がタバコをやめようとという気持になっても、すでにカネだけは支払ってしまっているのである。依存性を高める工夫ともいえる。また、現在ある深夜販売の規制をカード導入とともに撤廃する動きもあると聞く。
わたしの財布はもうカードだらけで(紙幣は少ないのに)パンパンに膨らんでいる。こういう状態は多くの人に共通しているはずだが、また一枚カードを余分に持ち歩くことを喫煙者たちは余儀なくされるわけである。しかも、それは「わたしはニコチン依存症です」ということを証明するカードなのである。また、カードによって個人を特定できるということは、どの喫煙者が自販機を通じてどれぐらいの金額をタバコに投じたかというデータをJTに握られることも意味する。それはあまり気持のいいものではないとわたしなどは考える。とはいえタバコの購入が面倒になり、個人情報が筒抜けになることが明らかになれば、その分だけ喫煙率は下がるだろう。
しかし、こう考えてくると、日本政府には喫煙率を下げようとか、タバコの害を減らそうという発想はまるでないのだ。JTの株のかなりの部分を政府が保有し続けており、JTが財務省からの有力な天下り先である限り、JTの事業が傾くような政策に政府が本腰になって取り組むわけがない。
なんとか「未成年者の喫煙防止に努力しております」という格好だけをつけて、タバコ産業そのものの延命を図っていると見るのが正確なところであろう。
by himitosh
| 2006-04-16 23:19
| タバコ