2006年 12月 02日
『フレッド・アステア自伝』 |
『フレッド・アステア自伝』(青土社)読了。非常におもしろい本だった。アステアはかつてのミュージカル映画の規範を作った人で、わたしにとっては特別な存在である。ミュージカルはダンスと歌を軸とする舞台や映画芸術であって、わたしに言わせれば、アメリカの伝統芸能のひとつだ。
とはいえ、この本でアステアが映画を語っているのは三分の一の分量に過ぎない。過半の部分は舞台のパフォーマンスの話である。フレッド・アステアは姉アデールとコンビを組んで舞台ですさまじい人気を博し、姉が結婚して引退したあとになってソロ・パフォーマーとして映画に出るようになった。(わたしの母の言では「アステアは最初から年寄りだった」そうだ。)この本には当時の写真が紹介されているが、アデール・アステアが素晴らしく魅力的だったことはそこからもうかがえる。
アステアのダンスは彼だけに地球の引力が働いていないような印象を与える。そういう軽やかで優雅な動きが見ている人々を魅了する。ミュージカル映画はどれも陳腐な筋立てで、ドラマとしてはたいしたことがないものが多い。しかし、歌と踊りだけで観客を惹きつける。したがってパフォーマーの力量が大きくものをいう。
アステアの歌もわたしはいいと思う。声量が豊かとか変わった声質だとかいうのではなく、すごく端正な歌い方をする。楽譜の通りに歌うのである。しかし、それが実にいいのだ。
この本は原書が1959年に出ているのだが、それが翻訳されるまで半世紀近く経過したのは不思議だ。理由はやはりミュージカル映画が「ウェストサイド物語」以降すっかり変わってしまったことと、アステア自身が過去の人になってしまったことだろう。まあ、ミュージカル映画というジャンルがいまでは消えてしまっている。
アステアの映画を見ておもしろいと思った人は、是非読んでみることをオススメする。
とはいえ、この本でアステアが映画を語っているのは三分の一の分量に過ぎない。過半の部分は舞台のパフォーマンスの話である。フレッド・アステアは姉アデールとコンビを組んで舞台ですさまじい人気を博し、姉が結婚して引退したあとになってソロ・パフォーマーとして映画に出るようになった。(わたしの母の言では「アステアは最初から年寄りだった」そうだ。)この本には当時の写真が紹介されているが、アデール・アステアが素晴らしく魅力的だったことはそこからもうかがえる。
アステアのダンスは彼だけに地球の引力が働いていないような印象を与える。そういう軽やかで優雅な動きが見ている人々を魅了する。ミュージカル映画はどれも陳腐な筋立てで、ドラマとしてはたいしたことがないものが多い。しかし、歌と踊りだけで観客を惹きつける。したがってパフォーマーの力量が大きくものをいう。
アステアの歌もわたしはいいと思う。声量が豊かとか変わった声質だとかいうのではなく、すごく端正な歌い方をする。楽譜の通りに歌うのである。しかし、それが実にいいのだ。
この本は原書が1959年に出ているのだが、それが翻訳されるまで半世紀近く経過したのは不思議だ。理由はやはりミュージカル映画が「ウェストサイド物語」以降すっかり変わってしまったことと、アステア自身が過去の人になってしまったことだろう。まあ、ミュージカル映画というジャンルがいまでは消えてしまっている。
アステアの映画を見ておもしろいと思った人は、是非読んでみることをオススメする。
by himitosh
| 2006-12-02 16:13
| 本