2007年 01月 07日
『奇跡の自転車』 |
ロン・マクラーティ『奇跡の自転車』(新潮社)読了。おもしろい小説だった。自転車小説(なんてジャンルがあるか?)かと思っていたのだが、実際にはアメリカの家族をめぐるさまざまな問題を感動的に語る小説だった。統合失調症患者とその家族を中心に、若者の精神的な自立の問題、アメリカの社会が抱える多くの病弊の問題などが扱われる。
語り手である主人公は両親を交通事故で亡くし、それと同時にホームレスとして路上で死んだ姉の遺体を引き取りに東海岸から西海岸まで自転車で旅をする。その旅は酒とタバコに浸りきった43歳、体重126kgという主人公が再生していく旅ともなる。もちろん再生の道具立てとして自転車は重要な役割を果たす。
旅を続ける時点と、家族の過去の歴史を振り返る時点がカットバック式に展開されていく。旅をしながらしだいに余分なものをそぎ落としていくポジティヴな現在と、押しとどめようのない悲劇に向かってドラマが展開していくネガティヴな過去が対照的に描き出される。そのどちらのパートもくっきりとした陰影を持っている。
ポジとネガのバランスがこの小説の根幹のような気がする。
映画化されるとのことだが、複雑なストーリーであるだけにこれを映像化するのはかなり難しいように思う。
語り手である主人公は両親を交通事故で亡くし、それと同時にホームレスとして路上で死んだ姉の遺体を引き取りに東海岸から西海岸まで自転車で旅をする。その旅は酒とタバコに浸りきった43歳、体重126kgという主人公が再生していく旅ともなる。もちろん再生の道具立てとして自転車は重要な役割を果たす。
旅を続ける時点と、家族の過去の歴史を振り返る時点がカットバック式に展開されていく。旅をしながらしだいに余分なものをそぎ落としていくポジティヴな現在と、押しとどめようのない悲劇に向かってドラマが展開していくネガティヴな過去が対照的に描き出される。そのどちらのパートもくっきりとした陰影を持っている。
ポジとネガのバランスがこの小説の根幹のような気がする。
映画化されるとのことだが、複雑なストーリーであるだけにこれを映像化するのはかなり難しいように思う。
by himitosh
| 2007-01-07 15:31
| 本