2007年 03月 03日
「麦の穂を揺らす風」 |
シネマセレクト松本の上映会で「麦の穂を揺らす風」(ケン・ローチ監督)を見る。去年のカンヌ映画祭でグランプリを取った映画である。1920年代のアイルランド独立運動を背景にした映画で、かなり期待して見に行った。
ケン・ローチには「大地と自由」という、ジョージ・オーウェルの『カタロニア賛歌』を下敷きにしてスペイン内戦を描いた秀作があって、これはわたしのビデオ・ライブラリにも入っている。この映画には非常に感動した。
さて、「麦の穂を揺らす風」である。
う~ん、マジメでいい映画なのだが、正直なところを言えばけっこうつらい映画だ。こういうテーマだとどうしても陰鬱な話にしかならない。終始救いがないのである。
「大地と自由」は内戦に参加したイギリスの労働者の話なのだが、彼が年老いて死んで孫娘が遺品を見つけるところが話が始まる。つまり、物語が二重になっていて、祖父の青春を孫が発見する構造になっている。そのおかげもあるし、イギリスの労働者にとってのスペイン内戦は外の世界の出来事なので、ある種の解放感があったように思う。ストーリーのなかにもそうした解放感があふれていて、気持が明るくなるようなシーンがたくさんあった。
「麦の穂を揺らす風」のほうは、アイルランドの人々の苦難を語りながら、最終的には同胞同士が殺し合うことになるので、そうした解放感は皆無である。それだけでなく、楽しいシーンがほとんどない。したがって、見ている途中も見終わってからも陰々滅々の気分になってしまう。
それが歴史的な事実であると言われればそれまでだが、アイルランドについての知識に乏しい日本人にとってはまことに取っつきが悪く、とまどうことが多いだろうと思う。
それからもうひとつ思ったのは、映画のスケール感がない。ほんとうであれば、アイルランド全体を巻き込んだ闘争であり、物語であったはずだが、それが一握りの集団の物語になってしまった印象がある。そういうわーっと広がりのあるシーンが入れば、もっとよくなったのではないか。
とはいえケン・ローチの映画なのだから、悪い作品ではない。画面も音楽も美しく、キャストも演技も見事である。わたしが言っているのは贅沢な願望でしかない。
ケン・ローチには「大地と自由」という、ジョージ・オーウェルの『カタロニア賛歌』を下敷きにしてスペイン内戦を描いた秀作があって、これはわたしのビデオ・ライブラリにも入っている。この映画には非常に感動した。
さて、「麦の穂を揺らす風」である。
う~ん、マジメでいい映画なのだが、正直なところを言えばけっこうつらい映画だ。こういうテーマだとどうしても陰鬱な話にしかならない。終始救いがないのである。
「大地と自由」は内戦に参加したイギリスの労働者の話なのだが、彼が年老いて死んで孫娘が遺品を見つけるところが話が始まる。つまり、物語が二重になっていて、祖父の青春を孫が発見する構造になっている。そのおかげもあるし、イギリスの労働者にとってのスペイン内戦は外の世界の出来事なので、ある種の解放感があったように思う。ストーリーのなかにもそうした解放感があふれていて、気持が明るくなるようなシーンがたくさんあった。
「麦の穂を揺らす風」のほうは、アイルランドの人々の苦難を語りながら、最終的には同胞同士が殺し合うことになるので、そうした解放感は皆無である。それだけでなく、楽しいシーンがほとんどない。したがって、見ている途中も見終わってからも陰々滅々の気分になってしまう。
それが歴史的な事実であると言われればそれまでだが、アイルランドについての知識に乏しい日本人にとってはまことに取っつきが悪く、とまどうことが多いだろうと思う。
それからもうひとつ思ったのは、映画のスケール感がない。ほんとうであれば、アイルランド全体を巻き込んだ闘争であり、物語であったはずだが、それが一握りの集団の物語になってしまった印象がある。そういうわーっと広がりのあるシーンが入れば、もっとよくなったのではないか。
とはいえケン・ローチの映画なのだから、悪い作品ではない。画面も音楽も美しく、キャストも演技も見事である。わたしが言っているのは贅沢な願望でしかない。
by himitosh
| 2007-03-03 20:09
| 映画