2007年 03月 22日
『週刊東洋経済』 ― ガンの嘘 不都合な「たばこ」の真実 |
3月19日発売の『週刊東洋経済』が22ページにわたってタバコの問題を取り上げている。いままでいくつかの日本の雑誌がタバコを扱った記事を掲載してきたが、この特集は量といい質といい群を抜いて内容の濃いものになっている。それをちょっと紹介してみたい。
(1)ガン死亡率を全死亡者中のガン死亡者の数で測る「粗死亡率」で見ると、日本でのガンによる死亡者は増えており、アメリカをしのぐようになった。だが、この数字の背景には日本の急速な高齢化がある。高齢者が増えればガン死亡者も増えるわけで、死因の増減を分析する際は、ある基準年の人口の年齢構成がずっと続いたと仮定して再計算する「年齢調整死亡率」を用いるのが適切である。
それで見ると、日本のガン死亡率はアメリカを抜くような増加を示しておらず、むしろ減少傾向にある。
(2)日本のガン死亡率が減少傾向にある理由は、長らくガンの部位別死亡率のトップだった胃ガンの減少にある。男性は1993年に、女性は98年にトップの座は胃ガンから肺ガンに替わった。
だが、この胃ガンの罹患率の低下は医療の改善や胃ガン対策の効果によるのではなく、塩分のとり過ぎが減ったからで、日本だけでなく世界的に共通した現象である。
(3)逆に明らかに世界的に見て明らかに出遅れているのが肺ガン対策である。米英の顕著な減少にくらべて、日本はせいぜい横ばい。その最大の要因は言うまでもなくタバコ対策の差である。
(4)肺ガンを引き起こす要因の中で飛び抜けて高い危険度を持つのがタバコである。それが表の形で見事に提示されている。たとえば肺ガンでは大気汚染の影響はほぼゼロであるのに対して、アスベストの危険性が3~5倍、喫煙が12.7~23.3倍と示される。食道ガンの場合にはアルコールが3.2倍であるのに対して喫煙が6.8~7.8倍となる。
タバコの危険性を指摘すると、大気汚染や排気ガスはどうするというようなことを言う喫煙者がいるが、このようにリスクが数字で示されると、そうした反論がほとんど意味を持たないことがよくわかる。
(5)日本の喫煙率は26.3%まで低下してきたが、その内容には問題がある。高齢者がタバコをやめている部分が多くて、若い年齢層では下がっていない。JTはこれをとらえて「禁煙は簡単だ、禁煙は可能だ」と主張しているが、高齢者はガンなどの重大な病気のために禁煙した人が多いと見られる。喫煙の害はそれを始めてから20~30年後になって表れてくる。予防の観点からは若い世代ほど吸う人が少ない状態を作り出さなければならない。
などなど、ほんの一部だけ紹介しても、なかなか力の入った記事が続く。そしてグラフや表などの使い方も見事である。これはタバコの問題を身近に感じている人は必ず買って読むべきであると考える。週刊誌なので、急いで本屋に走るべし。
(1)ガン死亡率を全死亡者中のガン死亡者の数で測る「粗死亡率」で見ると、日本でのガンによる死亡者は増えており、アメリカをしのぐようになった。だが、この数字の背景には日本の急速な高齢化がある。高齢者が増えればガン死亡者も増えるわけで、死因の増減を分析する際は、ある基準年の人口の年齢構成がずっと続いたと仮定して再計算する「年齢調整死亡率」を用いるのが適切である。
それで見ると、日本のガン死亡率はアメリカを抜くような増加を示しておらず、むしろ減少傾向にある。
(2)日本のガン死亡率が減少傾向にある理由は、長らくガンの部位別死亡率のトップだった胃ガンの減少にある。男性は1993年に、女性は98年にトップの座は胃ガンから肺ガンに替わった。
だが、この胃ガンの罹患率の低下は医療の改善や胃ガン対策の効果によるのではなく、塩分のとり過ぎが減ったからで、日本だけでなく世界的に共通した現象である。
(3)逆に明らかに世界的に見て明らかに出遅れているのが肺ガン対策である。米英の顕著な減少にくらべて、日本はせいぜい横ばい。その最大の要因は言うまでもなくタバコ対策の差である。
(4)肺ガンを引き起こす要因の中で飛び抜けて高い危険度を持つのがタバコである。それが表の形で見事に提示されている。たとえば肺ガンでは大気汚染の影響はほぼゼロであるのに対して、アスベストの危険性が3~5倍、喫煙が12.7~23.3倍と示される。食道ガンの場合にはアルコールが3.2倍であるのに対して喫煙が6.8~7.8倍となる。
タバコの危険性を指摘すると、大気汚染や排気ガスはどうするというようなことを言う喫煙者がいるが、このようにリスクが数字で示されると、そうした反論がほとんど意味を持たないことがよくわかる。
(5)日本の喫煙率は26.3%まで低下してきたが、その内容には問題がある。高齢者がタバコをやめている部分が多くて、若い年齢層では下がっていない。JTはこれをとらえて「禁煙は簡単だ、禁煙は可能だ」と主張しているが、高齢者はガンなどの重大な病気のために禁煙した人が多いと見られる。喫煙の害はそれを始めてから20~30年後になって表れてくる。予防の観点からは若い世代ほど吸う人が少ない状態を作り出さなければならない。
などなど、ほんの一部だけ紹介しても、なかなか力の入った記事が続く。そしてグラフや表などの使い方も見事である。これはタバコの問題を身近に感じている人は必ず買って読むべきであると考える。週刊誌なので、急いで本屋に走るべし。
by himitosh
| 2007-03-22 21:48
| タバコ